雨の魔女と灰公爵 〜白薔薇が咲かないグラウオール邸の秘密〜

 

(祝)魔法のiらんど大賞2022恋愛ファンタジー部門特別賞受賞 
 2023/11/1 角川ビーンズ文庫より発売→詳細ページ
 
 


 
この世のすべてを掻きあつめてでも、リルに会いたいと思った――

 
 
【あらすじ】

 建国百周年を迎えるアストリット王国――

 百年前、王とともに統一戦争を戦った四人の魔女。
そのひとり『雨の魔女アレクシア』を継承したばかりのリルは魔力が安定せず、魔法が思うように使えない。

 グラウオール家の当主レオラートは、三年前に亡くなった姉の形見(ネックレス)の贈り主を探すため、リルを訪ねる。

 この年、アストリット王国には雨が降りつづいていた。
 現国王から密命をうけ、天候不順の原因を探るためにも『雨の魔女』に近づいたレオラート。
 一方、ネックレスの手がかりを探しに、グラウオール邸を訪れたリル。そこで、白薔薇が咲かないことを知り、庭園内にある薔薇園に向かう。

 場所に記憶された『残像』に遭遇し、かつて四人の魔女と初代国王との間になにが起こったのか、過去を紐解いていくリル。
 師である『雨の魔女アレクシア』を亡くした悲しみから立ちあがるリルを、レオラートが寄り添い、見守っていく。

 つよく、たくましく生き抜く、彼女たちの物語。
 
 


 
 
【雨の魔女と灰公爵 〜白薔薇が咲かないグラウオール邸の秘密〜 冒頭文】 

 

 この物語を上梓するにあたって、尽力してくれた人々に心から感謝の気持ちを伝えたい。
 百年の禁忌を破ってくれたフレデポルト王に。
 インクまみれの原稿を救ってくれた乳母ミモザに。
 友人レオと愛らしい魔女に。すべてに感謝を。

                       ――ラフィレン・ペルニー
 


  

 今年、建国百周年を迎えるアストリット王国。

 
 百年前――白薔薇と平和を愛した初代国王バルトルトは、四人の魔女を従えて国土を統一した。
 魔女のひとりは王の妃となり(王の魔女ベアトリクス)、もうひとりの魔女は王家に末代までの忠誠を誓って騎士となった(騎士の魔女リカルダ)。

 
 残りのふたり――ひとりは錬金術に長け、西の鉱脈の権利を得ると研究に没頭する(石の魔女マクシーネ)。
 最後のひとりは四人の魔女のなかで、もっとも魔力が強く、天候を操るほどだと謳われたが、もう疲れたと言い残し、郊外にひきこもってしまった(雨の魔女アレクシア)。

 
 それから百年の歳月が流れ、魔女たちも代替わりをしたが、奇しくも最後まで生きた雨の魔女アレクシアが百二十六歳でこの世を去ったという――これが昨年の話である。
 
 


 
 
2022/9/29より、『魔法のiらんど』にて掲載。完結済み。